Q&A ③  《山馬筆について》


  送られてきた筆、拝見しました。

  電話でもお話ししましたが、この筆の原料は「山馬(さんば)」が100%ではなく、少し「馬」
 の毛を混合して作られているようです。山馬筆は、他の筆にない弾力性があり、昔から一部
 の方々の最も愛用する筆だったりします。

  そのため、山馬筆の要望は多いのですが、もうずっと前から原料が日本に入って来ていま
 せん。原料を持っている問屋も職人もほとんどいなくなっております。また、例え筆が少し出
 回っても、昔に比べたらずっと質の悪い筆で、しかも価格もビックリするほど高価です。

  この見本の筆は、原料がまだたっぷりあった頃、良いところ(細くて鋭い)を選び出して作ら
 れているようです。ですから、これと同じ筆(極上の山馬を使用)を作ることは難しいと思います。

  ところで、原料としての「山馬」は他の原料と違い、鹿毛のように毛の中が空洞(パイプ状)
 になっているため折れやすく、一旦折れたら回復できなく、使っている間に、そこから切れて
 しまうという欠点があります。(そのため、原料がたっぷりあれば、そんなに高価な値段を
 つけるような筆ではありません。)

  今回、見本の筆が、毛が抜けると言われていますが、落ちてきた毛の長さが筆の全長より
 短いので、途中から切れているようです。(軸の奥の、毛を糸でくくってたところが弱っている
 なら、全長より1cm位長い毛が抜けてきます。) 残念ですが、山馬筆の性質上、そろそろ
 寿命が来ているといえます。

  そこで、新しく、同じ筆を探されることになったのだと思います。私も少し原料は持っており、
 調べてみましたが、やはり極上はほとんどなく、全く同じ筆はできません。(技術的には難
 しくはありませんが) 

  ただ今後、「山馬筆」の書き味の筆を求められる方があろうかと思いますので、他の原料
 を組み合わせて、今回の見本筆に良く似た筆を作ってみたいと思います。もちろん完成した
 からと言って「これが山馬筆です」とはいいませんし、価格もずっと安いものになる予定です。

  ただ、今、これも「手に入らなくなったから作って」といって見本筆を送ってこられた方の
 注文に応じて製作中のが数件あり、順番にそれらを終えてからになりますので、少し日数
 がかかります。まあ、こちらが勝手に新作筆を作るという気持ちなので、絶対に作って買って
 もらうというのではありません。全く同じような(原料違いの)筆が完成するとも限らないし、
 できたら連絡致しますが、その時はご検討ください。

 寸法、形など控えましたので、大切な筆をお返し致します。
 
         ※この注文でできた新製品です  『3040 玄峰(70245)

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